終末十題
お題配布元→rewrite様
・戦国
・元親×政宗
・状況とかあんまり考えてないです。強いて言えば…関ヶ原?
・死ネタ注意
本当は大声で、泣き叫びたかった。
母に疎まれたときも、右目を切り落としたときも、父を殺したときも、母に毒を盛られたときも、弟を切り捨てたときも。
初めていくさばに立ったときも、人を殺したときも、殺されそうになったときも。
本当はいつだって、大声で、泣き叫びたかった。
誰も、それを許してはくれなかったけれど。
あの時の気持ち、嘘じゃなかった。
泣きたいと思っていたのは、嘘じゃない。悲しかったのも、辛かったのも、嘘じゃない。
でも、ずっと我慢しているうちに、判らなくなっていった。
あの時の気持ちは、嘘じゃなかった。
でも、もう、思い出すことすらできない。
さんきゅ、
「泣きたいなら、泣けよ」
ずっと欲しかった言葉だった。
ずっと、誰かに言って欲しかった。
「泣かねえよ。…でも…、さんきゅ、…」
もっと早く、そう言ってくれるお前に出会いたかった。
本当にくだらなくて切ないたとえばの話。
もっと早く会えてたら、どうなっていただろう。
俺はお前に甘えていただろうか、頼ることができていただろうか、涙を見せることができただろうか。
聞き流してくれ、これは本当にくだらなくて切ない、たとえばの話だ。
もっと早く出会えていたら、俺たちは一緒に生きる道を選んでいただろうか。
最期に、ひとつだけ。
こうやって会うことも、もうないだろう。
おまえの道と俺の道はまったく違うものだから。
でも、最期に、ひとつだけ教えて欲しい。
お前は俺に会えてよかったと思ってくれているだろうか。
人を傷付けるこんな感情などなくなってしまえ。
ずっと昔、俺は母からの愛が欲しくて、母への愛を受け取って欲しくて、けれどどちらもかなえられずに泣いていた。
そして今、俺はお前を愛して、お前に愛されて、けれど幸せにはなれなくて。
人を傷つけるこんな感情などなくなってしまえと心底思う。
でも、この感情以上に俺を幸せにしてくれたものなんてどこにもなかった。
全て知っていたのに?
「もう、おまえはおまえを認めてやれよ」
どうして、おまえは俺なんかを愛してくれたのだろう。
俺の弱さも狡さも全て知っていたのに?
最期とわかっているのにその腕があまりにも温かすぎて、すがりたくなってしまう愚かな俺をどうか許して欲しい。
手を汚すのは自分だけでよかった。
「…どうして、こんなところまできたんだ?別れは済ませえてきただろう」
「馬鹿野郎、あんな思いつめた顔をしたお前を一人でいかせるわけねえだろうが」
手を汚すのは、自分だけでよかった。
それなのに、一人じゃなくてよかったと思う俺を見透かしたようにお前は笑う。
もう、おしまいだから。
これで本当に最期だから、だから、少しだけ、甘えてもいいだろうか。
「政宗?おまえ…血が…っ」
もう、おしまいだから。
お前が傍に居る、こんなに幸せな最期を迎えることができるなんて考えてもみなかった。
瞼の裏に残るのは笑顔だけ。
「政宗、政宗っ、おいっ、目を開けろよ!」
薄れる意識、狭まる視界の中、最期の力で無理やりに象った笑みに返される泣きそうな歪な笑顔。
そして閉じた瞼の裏に残るのは笑顔だけ。
それだけで、十分だった。
これでおわり。今日でおわりだから、最後にひとつだけ。「ありがとう」
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