君と彼を見ている僕
僕たち4人は親友で
でも君たち2人は親友以上の関係で
ほかの誰にも入っていけない絆を僕たち4人は持っていて
お互いにしかわからない だけど何よりも強い絆を君たち2人は持っていた
ねえ 少しくらいそれに嫉妬したって許されるだろう?
「なあ、シリウスー。なんか暇だよな」
背中合わせに座ったシリウスに、ジェームズが声をかける。ついでに、体重もかける。
「…ジェームズ、よく見ろ。俺は、今本を読んでいるんだが?」
本から視線を上げることもせずに、のしかかってくるジェームズを背中で押し返しながらシリウスが答える。
「え〜。だって、僕は今、退屈なんだよ」
「………」
ジェームズの今度の言葉には、シリウスはいっそ見事なまでに無視をして反応を返さない。
「ねえ、シリウスー」
「………」
「シリウスってばー」
「……」
「返事してよ」
「…」
「シリウス」
「!?」
構ってくれと名前を呼ぶジェームズを無視して本を読み続けていたシリウスだったが、耳元でふっと名前を呼ばれた瞬間、真っ赤になって飛び上がった。
シリウスのその反応に満足したらしいジェームズは、シリウスの頬を両手で挟みこんで自分のほうを向かせ、軽く口付ける。そして真っ赤な顔で睨んでいるシリウスに向かってにっこりと笑って言った。
「ね、チェスでもしよ?」
まだ赤い顔でジェームズを睨みつけていたシリウスだったが、やっと自分を見てもらえたことでにこにこと満足そうなジェームズに毒気を抜かれたらしく、ふっと微かに笑うと、言った。
「後数ページで区切りがつくから、それまで準備でもして待ってろ」
その言葉に満面の笑みでうなずいていそいそと準備を始めるジェームズを見てもう一度微笑すると、シリウスは急いで本に目を戻し、先ほどよりも早いペースで読み始めた。
「ねえ、リーマス」
二人の様子を僕と並んでみていたピーターがこそこそと僕に耳打ちする。
「なんだい?」
「この部屋の…っていうか、ここらへんだけ体感温度が高いと思わないかい?」
「…そうだね」
ピーターの言葉にうなずくと、にっこりと笑って言葉を続けた。
「やたらこの部屋の不快指数が高い気がするよ」
本人たち…特にシリウスは自覚がないだろうが、周りで見ている僕らにしてみれば、公共の場でこんなにいちゃつかれると、「いちゃつくんならどっかいけ!」と言いたくなる。まあ、僕らが言っても聞くような彼らじゃないけれど。
部屋から戻ってきたジェームズが、にこにこと嬉しそうにチェスのセッティングをしている。シリウスも、口元に笑みを刻んでいる。2人とも、顔のつくりがいいだけに笑うとすごく迫力がある。思わず、見慣れているはずの僕でさえ見惚れてしまいたくなってしまうほど。
彼らの笑った顔の中でも、今のようにお互いを想っての笑顔は、本当にすごくきれいなんだ。でも、その笑顔がきれいならばきれいなほど、2人の絆を思い知らされるような気がして。
僕たち4人組の中でも、彼らは特にお互いを想いあっている“特別”なのだとは知っているけれど、やっぱり寂しさは拭えない。
無二の親友で、大切な大切な愛しい恋人同士の僕の親友2人。
幸せになってほしい、と想う。
彼らは男同士で、いろいろと障害があるのはわかってる。だけど、あの口のうまいジェームズがついているからどうにか切り抜けられるだろうこともわかっている。
でも、ほんの少しだけ、彼らが困ればいいな、と思ってしまう僕がいる。
だって、僕なんか眼中にないとわかってはいても、それでも僕は彼のことが好きだから。
幸せそうな姿を見れるのは嬉しい。
この幸せがいつまでも続けばとも思う。
彼の実家を…親族を知っているからこそ、ホグワーツで幸せそうにしているシリウスを見れるのは、嬉しい。
ただ、その幸せを与えているのが僕でないことだけは残念だけれど。
「ねえ、シリウス〜。まだ?」
「五月蝿い。少しぐらい待てんのか」
口調はそっけないけれど、楽しそうな表情のシリウス。…あんな表情を向けてもらえるジェームズに多少嫉妬してしまうのはまあ、しょうがないだろう。
「…リーマス?」
ジェームズが、恐る恐ると言った感じで僕を振り返る。
「どうかしたのか?」
隣に座っているシリウスが、ジェームズを見上げて不思議そうに首をかしげる。
そこら辺の男がやったら気持ちが悪いだけのその動作も、シリウスがやるととてもかわいい。これは、親友のよく目なしに見ても、だ。
「ジェームズ、どうかしたのかい?」
にっこりと、極上の作り笑顔でジェームズを見ると、心持青ざめた顔が見えた。
「…今少し殺気が…いや、なんでもない」
「そう?じゃあいいけど」
心配そうにジェームズを見上げていたシリウスに抱きついて呼吸を落ち着けようとする姿を見つけ(この野郎)と想ったが、まんざらでもない様子のシリウスまで目に入ってしまったので、とりあえず今日は生暖かい目で見守ってやるか、と思い直した。
ちなみに、僕の隣に座っていたピーターが怯えていたことは、わざわざ言うまでもないだろう。
僕は君が笑っている姿がとてもとても好きだった
BACK