…いっそ奪ってくれればいいのに。
小十郎が自分に惚れていることなんて、とっくの昔に気づいている。何年一緒にいると思っているんだ。一日のうちにどれだけおまえと一緒にいると思っているんだ。
だから、政宗は知っている。小十郎が、政宗が小十郎にほれていることを知っているということを。
嗚呼、まだるっこしい。時折向けられる情欲を帯びた雄の目に気づかないふりをするのも楽じゃないんだ。
俺からなんて求めてやらない。
だってしょうがないだろう?怖いんだ。拒まれたらどうしようって。そんなことありえないってわかっていても不安になる。
求められたいんだ。俺が求める以上に、おまえに求められたいんだ。息も止まるほどに強く、愛されたいんだ。
わがまま?そんなの知ってる。でも、おまえの仕事だろう、俺の望みをかなえるのは。
忠義面なんて投げ捨てて、俺を求めろよ。本能のままに、喰らい尽くせよ。俺は逃げたりなんかしない。おまえを受け止めてやるよ。俺に牙を立てるおまえの背に爪を立ててやる。
なあ、早く。
お上品なおまえだけじゃ足りない。おまえの全部が欲しい。
本能むき出しの、獣のような荒々しいおまえに理性ごと浚われたい。
いっそ、奪ってくれればいい。
俺は奪うおまえを咎めない。それと同じだけ、もしかしたらそれ以上のものをおまえから奪ってやるんだから。
だから、なあ、小十郎。
早く、我慢なんてやめて俺を奪えよ。
本当は、喰われるのを待っている。
旧拍手お礼文(2010.10.2〜2011.9.27)
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