注意
友人と盛り上がった結果できた突発的なパラレルです
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ディーノとヒバリは腹違いの兄弟
ディーノは本妻の子、ヒバリは愛人の子
ディーノとヒバリの父はすでに他界
ディーノの母も他界
ディーノはキャバッローネのボス
ヒバリの母が亡くなったことを知りディーノが日本までヒバリを迎えにいく
ヒバリが並盛中を卒業してからイタリアで共に暮らし始めた
ぶっちゃけ二人が兄弟である必要はあんまりない話です
オレがマフィアになった理由(わけ)
「だいたい、あなたはナニ考えてるわけ?少しは他人の迷惑を考えたら?」
言いながら恭弥がトンファーを振り上げる。
「うるさい!どういう意味だよそれ。確かに、オレはいっつもおまえに迷惑かけてるかもしれないけどっ」
それをムチでビュッとはじきながら間合いをとる。
「けど、じゃなくてかけてるんだよ」
すかさず反対の手で持っていたトンファーを構えながら体勢を低くして恭弥が突っ込んでくる。
「でも、今回のことに関してはおまえには何の迷惑もかけた覚えはない!」
その足元を狙ってムチを振るった。
「ワオ!驚きだね。よくそんなことが言えたもんだ」
トンファーで軽く弾かれたがそんなことは予想済み。一気に間合いを詰めて蹴りを入れる。
「言いたいことがあるならハッキリ言え!じゃないとわかんねぇんだよ」
身体を少し傾けることでオレの蹴りを避け、お返しのようにトンファーで顔面を狙われた。後ろにのけぞるようにして避けながらムチを振るう。
「自覚はあるんだ?」
わずかな動きでそのムチを避けたがそんなことは予測済み。オレの狙いはおまえにあてることじゃないんだ。
「…」
そこにあった机の脚を中点にして後ろから恭弥の左手のトンファーをとらえた。軽い舌打ちの後、間髪いれずに右手のトンファーでオレの首を狙う。その間にオレは恭弥の足を払った。
「!」
恭弥は倒れながら左手のトンファーを解放してオレの襟首をぐっと掴んだ。
「ちょっ、おい!」
あせっても無駄。オレと恭弥は折り重なるようにして床に倒れこんだ。
「……」
「……」
引き分けだ。
なぜこんな状況になったのか。話はまず1日前にさかのぼる。
「ボス、あらかた片付いたぜ」
「おう。ご苦労だったな。住民たちの被害は?」
「何人か怪我をしてる。あっちのバカが仕掛け爆発に巻き込まれたせいで2人死んだ。重傷者が12名。あとは軽傷を負ったものが何人か」
「そうか…」
「今、皆はどこにいる?」
「こっちだ」
ボンゴレ9代目に呼ばれて1週間ほどシマを離れていた間にどこぞのバカが現れてオレのシマを荒らした。
やり口は最悪。物の強奪。女を無理やり連れて行く。少しでも逆らえば殴る蹴るの暴行を加える。ガキが相手でも容赦がない。マフィアどころか人間として最低の部類に入る連中だった。
知らせを聞いてすぐにやつらの情報を集めさせ、ボンゴレ9代目への辞去の挨拶もそこそこにその足で部下と一緒にここに来た。
鎮圧にそう時間はかからなかった。住民の協力を得られたからだ。もともと何度か訪れたことのある街で知り合いも多かった。おかげで住民の避難等も速やかにできたのだ。しかし、ヤツラはオレたちが考えていたよりもずっとバカだった。キャバッローネが来たと知ってパニクったヤツラの誰かが建物を爆発させた。ほとんどの住民はすでに避難し終わっていて、残っていたのは最後の数人だった。自分を後回しにしてほかの住民を避難させていた人たちだった。そいつらが、爆発に巻き込まれた。
「ディーノ…」
近づくと、顔見知りの男が立ちあがった。確か、ジークという名前だ。何回か一緒に酒を飲んだ。いつも陽気な男だったと記憶しているが、今は怒りと悲しみと安堵の入り混じった複雑な顔をしている。
「…遅くなって、すまなかった」
「いや…」
「すまなかった」
「…ジルとティックが死んだんだ」
「…」
ジルもティックも、一緒に酒を飲んだ。三人は仲が良くて「悪友だ」と言って笑っていた。陽気な気のいい連中だった。
「顔を、見てやってくれるか?」
「…ああ」
ジルは、右腕がなかった。ティックは、顔に大きな怪我があった。でも、二人の表情には憎しみも怒りも見られなかった。
「ジル…」
消毒液に浸した布で顔を拭ってやると、すぐに布は黒くなった。
「ティック…」
大きな怪我を負っているのに血は流れない。体が冷たい。
「すまない…本当に…すまない…」
オレは、二人に謝ることしかできなかった。
「ディーノ」
「…」
「こいつら、最後まで中で住民の誘導をしてたんだ」
「…」
「オレは、こっちで避難してきたやつらがバニクらないように動いてた」
「…」
「こいつら、笑ってたぜ『ディーノがきたからもう大丈夫だ』『あいつなら、あんなバカどもすぐに片付けるさ』」
「…」
「こいつらのこと、忘れないでやってくれよ」
「…ああ」
「サンキュ」
うつむいて、唇をかみ締める。
オレは、こいつらを守れなかった。どれだけ多くの人間を守れても意味がない。どんなに少なかろうと死んだ人間が、傷ついた人間がいるのなら意味はない。オレが守りたいのはすべてだ。何一つ失いたくない。すべてを守るためにオレは大嫌いだったマフィアになったのに。
まわりにいるのは気のいい連中ばかりだったけれど、それでもマフィアというものが嫌いだった。大嫌いだった。マフィアのボスになんてなりたくなかった。大きな力は人を傷つける。親父が死んで、オレは突然キャバッローネを任された。財政は傾いてファミリーはぼろぼろだった。このままキャバッローネがなくなればいいと思った。
『甘えんなよ』
突然現れた家庭教師。リボーン。いろんなことを教えてもらった。
『おまえが継がなければ、誰が継ぐんだ?傷つけるのが怖い?誰も殺したくない?甘っちょろいこと言ってんなよ』
その目の鋭さに射抜かれるかと思った。
『マフィアっていうのは傷つけるのが仕事じゃねえ。殺すのが目的じゃねえ。勘違いしてんじゃねえ』
でも、どうしても目をそらせなかった。
『傷つけたくないなら、守れ。殺したくないのなら、強くなれ。おまえは、それだけの力を手に入れることが出来る場所にいるんだ』
あの言葉を、忘れない。
『忘れるな。おまえが、キャバッローネファミリー10代目ボスだ』
もっと強くならなければいけない。こいつらのような犠牲をなくすために。何一つこぼすことなく守れるように。
そう思い、顔を上げた。
そうだ。
オレはあの時誓った。
俺を愛し育ててくれた親父に。
守り慈しんでくれたファミリーの連中に。
小さな家庭教師に。
半身に刻まれたキャバッローネの証、このタトゥーに。
ふと向けた視線の先に、ナイフを持った男がいた。
「!」
(危ない!)
その先にいるのは12歳くらいの少年。
細かいことをごちゃごちゃ考えるより先に体が動いた。
バカの最後の抵抗。ここで子供を狙ってる時点で人として終わりだ。こんなやつらに、ジルとティックは殺されたのか。腸が煮えくり返る。
「え?」
ドン
男のナイフが少年に届くよりもオレが少年を庇う方がわずかに早かった。
抱きしめて庇った少年は突然の事態に思考がついていかないのだろうか、目を見開いて絶句している。そのまま同じく予想外の事態に一瞬動きが止まった男を蹴り飛ばした。かなり本気で蹴ったため男は数メートル吹っ飛んだ。左腕にささったままのナイフが邪魔だ。
すぐに数名の部下が男を取り押さえた。
近くにいた部下と住民がすぐにオレを取り囲んだ。
「ディーノ!」
「ボス!」
「ドン・キャバッローネ!」
「ディーノ!」
「10代目!」
「ボス!」
「このヤロウ…っ!」
「大丈夫かっ?」
「すぐに止血を!」
騒ぎだしたやつらを横目にオレは泣き出しそうな顔の少年に向き合った。
「怪我はねえか?」
こくん
「そうか。よかった…」
少年の瞳には涙がたくさんたまっている。
怖かったのだろうと思い、なるべく優しい笑顔を作って、安心できるようにと頭をなでてやると少年はぼろぼろと泣き出した。
泣いたことに、ほっとした。
「よしよし、もう大丈夫だからな」
軽く抱きしめて今度は背中をぽんぽんと叩いてやる。
「ドン・キャバッローネ…」
嗚咽交じりに震える声。微かに震える手が俺の腕にしがみつく。
「ん?」
少し離れて視線を少年に合わせた。
「…ごめんなさいっ」
「は?」
「オレのせいで、…オレのせいで、ドンが怪我を…」
ああ、そのせいだったのか。
怖かっただけじゃないのか。
俺の痛みを思って泣いてくれたのか。
(優しい少年だ)
この少年が、あんなバカに傷つけられなくてよかった。
守ることができて、本当によかった。
「気にするなよ」
「でもっ」
「オレが勝手にやっただけだ。おまえが気にすることじゃないさ」
「でも、ドンがいなかったらオレは…」
必死な顔。
「おまえのためじゃない。オレが、守りたかったんだ。誰かが傷つくのを、見たくないんだ。おまえが生きていてよかったよ」
「ドン…」
「誰かが死ぬのが一番キライなんだ」
「…」
「生きてて嬉しいか?」
「…はい」
「じゃあ、“ごめんなさい”よりも違う言葉を言ってくれよ。それで全部帳消しになるからさ」
笑ってやると、少年は少し表情を和らげた。
「ドン・キャバッローネ」
「そんな堅苦しい呼び方するなよ。ディーノでいいぜ」
「じゃあ、ディーノ」
「おう」
「助けてくれて、ありがとうございました」
そこにこめられた万感の思い。下げられた小さな頭。その頭をくしゃりとなでてやった。
「おう」
目が合って、もう一度笑ってやると少年も釣られたように笑った。
オレが守りたかったものがそこにあった。
『オレは、すべてを守れるボスになる。何一つ、失わない。全部、守る』
そう、誓った。
『その言葉、忘れるなよ』
小さな家庭教師はそう言って外見にひどく不釣合いな大人びた顔でニッと笑った。
「ボス、あんま無茶してくれるなよ。寿命が縮まったぜ」
「悪い悪い。でも、死ななかったし問題ないだろ?」
「怪我したじゃねぇか」
「生きてるからいいんだよ。…オレもあの少年もな」
「はぁ…」
「オレは全部守りたいんだよ」
ロマーリオが手当てしてくれた。
怒ったような顔をしていたが、最終的には複雑な顔をしてため息を吐いていた。
「まあ、それがボスのやりかたならオレたちに異論はない。でも、もう少し自分を大切にしろよ」
次の日の昼過ぎ、近いうちにまた街の様子を見に訪れることを約束してオレたちは屋敷に帰った。
「で、ボス」
「んー?」
「それ、ボウズに何て説明するつもりなんだ?」
「…」
「……………………転んで階段から落ちたことにする」
「無理があるぞ」
「………………………じゃあ、うっかり壺を割っちまって破片で傷つけたことにする」
「どっちも可能性としてはありそうだけどそれじゃあその傷にはならないだろ」
「…」
「本当のことを言うのが一番いいと思うぞ」
「…あいつには、何も言うな」
「…」
「あいつはマフィアじゃない。関係ない。だから、…何も言うな」
「ボウズは納得しないと思うけどな」
「…でも、何も言うな」
「わかったよ」
「ただいま」
「…おかえり」
包帯はスーツのジャケットに隠れていて今は見えない。消毒液の臭いもコロンでごまかした。動きがなるべく自然に見えるように動作も意識している。
このまま、気づかれなければいい。
「ディーノ」
すれ違いさま、腕を掴まれた。左腕を。一瞬痛みに顔がこわばるがすぐに意識して笑みを作った。
「どうした?恭弥。オレがいなくて寂しかったか?」
わざとおどけた声音を作って笑うと、恭弥の眼が鋭く光った。
「この腕は?どうしたの」
「何のことだ?」
「とぼけないでよ」
恭弥が手に力を入れた。痛い。うめくのをこらえて笑った。
「壺を割っちまってさ、そのときに破片でちょっと傷つけちまったんだよ」
「…」
「情けないから言いたくなかったんだ」
「ディーノ」
「ん?」
「…あんまり僕を見くびらないほうがいいよ」
「…」
恭弥の目はすごく強い。こんなときは、特に。
「もう一度だけ聞くよ」
「…」
「この腕は、どうしたの?」
「………壺を割ったんだ」
「そう…」
恭弥の手が離れる。ほっとしたのもつかの間。
ダン
壁に身体を叩きつけられた。背中が痛い。
「じゃあ、傷見せてよ」
「見て楽しいものじゃねえぞ」
「かまわないから。見せてよ」
「…オレ、自分じゃ包帯巻きなおせねえし」
「じゃあ僕が巻きなおしてあげる」
「おまえが?」
「何か文句ある?」
「いや…」
「見せて」
「…」
恭弥の目は肉食動物のソレだ。獲物を絶対に逃がさない。オレは逃げ切れる自信がない。でも、つかまるわけにもいかないんだ。
「ディーノ」
左腕を、掴まれる。強く。容赦なく。
「くっ…」
痛みにうめいてしまった。恭弥は冷ややかな目でオレを見ている。
ばっ
無理やりスーツを脱がされた。ワイシャツの袖をめくられ、問答無用で包帯を解かれた。腕に力が入らない。うまく抵抗できない。
「…」
「ふぅん?」
「…」
「これが、壺の破片でできた傷?」
「…」
「僕にはどうしてもナイフの刺し傷にしか見えないんだけど?」
「…気のせいだろ」
「往生際が悪いね」
傷をなでられた。
「観念したら?」
ぐっと指に力を込められた。
「った…」
「痛い?」
「ったりまえだろ!」
「じゃあ、さっさと言ってよ。どうしてこんな傷ができたの?」
「…」
「ディーノ」
「…恭弥には関係ない」
言ってから、しまったと思った。
次の瞬間にはまったくの無表情になった恭弥がトンファーを振り上げていた。
(どっからだしたんだよ、それ!)
なんとか間一髪でそれを避ける。ソレと同時にムチを取り出して構えた。
そして、現在に至る。
「恭弥」
「…なに」
「どうしてそんなに怪我の理由を知りたがる。知らなくても問題ないだろ」
「確かにね」
恭弥はうなずいてから身体を起こした。そして睨み付けるようにオレを見下ろした。肩に手を置くことでオレが起き上がるのを阻止する。
「あなたがどこで何をしていようと僕には関係ない」
「…」
「でも、不快なんだよ」
「恭弥?」
「僕の知らないところであなたが僕の知らない傷を負っているのはたまらなく不快だ」
恭弥の視線はまっすぐで迷いがない。迷いだらけのオレはいつだってその視線がまぶしい。
「あなたのことを兄だなんて思ったことはないけど、それでもあなたが傷つくのは不快だ。それが僕の知らないところでなら尚更。それだけだよ」
「…」
恭弥は嘘を吐かない。だから、この言葉は本当だ。少しだけ泣きそうになった。なんでかわからないけど。
「だから、教えて。この傷は?」
ため息をついた。観念する。あんな言葉を聞いてしまっては、こたえるしかないではないか。
「少年をかばって刺された」
ぴくりと恭弥が反応した。不快そうな表情になる。
「オレがボンゴレのところに行ってる間に、どこぞのバカがうちのシマを荒らしやがった。それを押さえに行ったときに刺されそうになっていた少年をかばって負った傷だ」
「…どうして他人をかばうの」
「誰かが傷つくのを見るのがキライだからだ」
「それで自分が傷ついてちゃ世話ないね」
今度はオレが恭弥を真っ直ぐ見る番だった。
「誰かが傷つくのを見たくない。誰かが死ぬところなんて、絶対に見たくない」
「だったらどうしてマフィアなんてもののボスになったの」
「…マフィアなんて嫌いだった。なりたくなかったしなるつもりもなかった」
そこで大きく息を吐き出した。
「でも、言われたんだ」
「…」
「『傷つけたくないなら、守れ。殺したくないのなら、強くなれ』。…守りたいものが、あった。だから、オレはキャバッローネ10代目ボスになった」
ゆるく首を振って微かに笑った。
『オレは、すべてを守れるボスになる。何一つ、失わない。全部、守る』
誓いの言葉。
ロマーリオたちも知らない。知っているのはオレとリボーンだけ。自分のほかにはアイツだけが知っていれば十分だ。オレがその道を外れることがあればアイツは殺してくれるだろう。最強のヒットマンだから狙いははずさない。
オレの持つ力は奪うためではなく与えるために。
傷つけるのではなく守るために。
殺すのではなく育てるために。
誓ったんだ。
守ることのできるボスになると。
何一つ、失わないと。
「おまえに言いたくなかったのは、おまえをマフィアに関わらせたくなかったからだよ」
「一緒に住んでおいて、なにを今更。僕だってマフィアの息子なんだし」
「うん。今更だけど、さ。でも、やっぱりおまえを関わらせたくないと思う」
「…あなたの意思なんて関係ない。僕はいつでも僕のやりたいようにやるよ」
そう言って不敵に笑う恭弥を見て、多分自分はコイツには敵わない、と思った。
「あなたがなんて言おうと、あなたと一緒に住んでいる時点で僕はもうマフィアというものに関わっている。今更どうあがいたってそれは変えようのない事実だ」
「ああ」
「さっきも言ったけどあなたが僕の知らない間に勝手に傷つくのは不快だ。だったら、最初からそばにいればいい」
「恭弥」
「僕は、あなたのそばにいる。あなたのためでなく、僕自身のために」
「おい…」
「それともあなたは僕に苛々のあまり胃炎にでもなれと言うの?」
恭弥が胃炎になんてなるわけない、と思ったが口には出さなかった。後が怖いから。
「それでももし、まだ文句を言うのなら…」
背筋がぞくっとした。
「噛み殺すよ?」
いつのまに構えたものか、オレの首筋にはトンファーの冷たい感触が。
「…わかった」
降参の印に両手を挙げた。
「隠さない。おまえも全てを…オレのそばで全てを見ろ」
そう言って笑うと、恭弥はトンファーをひいた。
オレは身体を起こしてから部屋の隅に立っていたロマーリオに声をかけた。
「ロマーリオ」
「どうした、ボス」
当然のように即座にこたえるのは流石だ。緩く笑っているところを見るとこうなるのを予想していたのだろう。
「なんだ、いたの」
恭弥は立ち上がって覚めた目でロマーリオを一瞥した。こいつは興味のない人間は目に入らない。敵意のある相手に対しては野生の動物以上の鋭さを見せるくせに。
「こら、恭弥。…ロマ、今の話聞いてただろ」
ため息を吐いて無駄だと知りながらも恭弥を一応たしなめてからまたロマーリオのほうに顔を戻す。
「まあな」
恭弥のセリフなんて毛ほども気にかけずいつも通りの様子でロマーリオはうなずいた。
「じゃあ、そういうことだから」
「わかった」
「ついでに救急箱持ってきてくれるか?オレも恭弥も怪我してるから。あ、血は止まってるけど」
「…わかった」
マフィアなんて大嫌いだ。
でも、オレはファミリーを愛している。
マフィアなんて大嫌いだ。
でも、キャバッローネ10代目であることはオレの誇りなんだ。
マフィアなんて大嫌いだ。
でも、案外オレは今幸せなんだ。
結局は、そういうことなんだろう。
『オレは、すべてを守れるボスになる。何一つ、失わない。全部、守る』
願いをかなえるために。
大切なものを失わないために。
傷つく人をみないですむように。
これが、オレがマフィアになった理由(わけ)
奪うものは、許さない。
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