「政宗殿、起きてくだされ!」
無視を決め込もうにもゆさゆさと揺さぶられてしまっては煩わしくて流石の俺も寝ていられない。
「Ah-n?」
犯人はわかっている。というか、入学してまだ一月だというのにすでにこれは日常習慣のなかに含まれつつある。
「Shut up!…What time is it?Ah-…I have more time for sleep」
「何を申しておるのかわかりませぬ。それより政宗殿、もう起きる時間ですぞ!」
半分以上寝ぼけながらつぶやけば、英語のレベルは小学生以下の真田は不快そうにさらに激しく俺を揺さぶる。
ちょっとまて、おい、酔うだろうが!
激しく揺さぶる真田のせいで本格的に酔いそうになった俺がキレて一発殴りつけると、真田は殴られた場所をさすりながら涙目でキッと俺をにらみつけた。
「政宗殿は、“早起きは三文の得”という諺を知らないのでござるか!?」
「Ha?」
「某は、政宗殿のためを思って毎朝起こして差し上げているというのに!」
ちなみに、現在時刻は5時45分だ。さらに言えば、真田が俺を起こしてから15分が経過してる。つまり、4時30分に起床して朝の素振りとトレーニングを終え汗を流した真田はその勢いのまま俺を起こしたということだ。学校が始まるのは8時30分、寮から学校までは10分もあれば余裕でつく。どれだけゆっくり身支度をしたとしても、どう考えても早すぎるだろう。
「No way!てめえ、何言ってやがる。このcrazy野郎が!!」
「わけがわからないのは政宗殿のほうでござる!毎朝某が起こして差し上げているおかげで、政宗殿はすでに九十文も得をしているのでござるよ!?」
あ、だめだ。アホだこいつ。
「Shut up!っつーか、文って何だよ。現代の通貨単位じゃねえだろ、明らかに。んなもんが何の役に立つっつーんだ!」
「なんと!礼を言うどころか難癖をつけ某の親切を否定するとは。流石に温厚な某とて黙ってはおりませんぞ」
「てめえが温厚?Ha!笑わせるんじゃねえぜ。第一、おまえのは有難迷惑、親切の押し売りっつーんだよ!たかが三文よりも俺はあと三時間の睡眠をchoiceするぜ」
「あと三時間も眠っておれば、始業時間になってしまうでござろうが!」
「知るか。そっからHRとかいろいろめんどくせえもんがあるんだから、十分間に合うだろうが!」
「時間には余裕を持って動かねばならぬと佐助が常々言っておりますぞ!」
「時間に余裕がありすぎるのはただのアホっつーんだぜ。You see?っつか、そもそも、一日早起きするだけで三文稼げるっつーんなら、てめーが後生大事に首から提げてやがるその冥途の渡し賃は二日早起きすれば稼げる安いもんなのかよ?てめーの覚悟はその程度なのか?」
「むむ、いくら政宗殿なれど某はおろかこの六文銭まで愚弄するとは、許せませぬ!」
「何だと、やるか!?」
「望むところ!!」
「Let's party!!」
「漲るうううぁああああぁぁああぁあ!!!」
結局、今日も始業時間ギリギリに真田と二人そろって教室に滑り込むことになったのは言うまでもない。
早起きは三文の得