暑い。
部屋に入ってすぐに冷房をつけたものの部屋が冷えるまでにはまだ時間があるし、それを待っていても滴る汗は止まらない。何より、この暑さにはもう耐えられない。

冷凍庫をあさり、政宗はアイスを取り出した。
パリ
軽快な音とともに袋を破り、中から取出した棒つきのミルクアイスに思わず口元を緩める。アイスクリームの周りをただよう冷気がすばらしい。棒を持った手のあたりに漂うそれを楽しみつつ、まずは一口。

しゃくり

(うまい…)
味がどうというよりも、冷たい。この点で、コンビニの百円のアイスクリームはどんな高級な料理よりも今の政宗にとっては好ましいものだ。
(I am very happy now…)
我ながらずいぶん手軽な幸せだ、思いながらも普段は好まない甘い冷菓が旨くてたまらない。

もう一口。
口を開きかけたところで、へろへろと部屋に入ってくる男がいた。
「暑い…で、ござるぅ…」
(来た…暑苦しいやつが)
そういえば、一緒に帰ってきたのだった。買い物袋を押し付け、冷蔵庫にしまっておくよう言ったのは政宗だ。
幸村は家事はからっきしな男であるが、洗濯物を取り込む(取り込むだけで、たたむのは苦手だ)ことと、食材を冷蔵庫にしまうことだけは、政宗と、幸村の幼馴染である佐助のおかげでできるようになったのだ。

「政宗殿、いいものを食べておられますな!」
幸村は暑さにうんざりしたような顔をしていたが、政宗が手にしたアイスに気がつくと、ぱっと顔を輝かせた。
「某も頂戴いたしたく候!」
今まさにアイスをもう一口かじろうと口を開いていた政宗はそのままちらりと幸村に視線を向ける。
(は?)
目の前に、幸村がいた。

ぐいっ
嬉々とした笑顔でよってきて、政宗の返答を聞くより先に政宗の膝に手をつき、政宗の手首をつかんでひきよせる。

しゃくり

軽い音を立ててアイスがかじられる。
呆然とその様子を見ている政宗に気づかず、幸村は満足げに笑う。
「おいしゅうござる。……あ、垂れかけているではござらぬか」
政宗の膝にかけた手も、手首をつかむ手もそのままに幸村は軽く身をかがめ、顔を傾けて垂れかけたアイスを舌でぬぐう。

それは、まるで夜にベッドの中で政宗のそれを愛撫する仕草にも似ていて。
「〜〜〜っ!」
昨夜の熱を思い出して顔を真っ赤に染めた政宗は、内心で毒づく。


夏がこんなにも暑いのはこいつのせいだ、と。






でもその暑さすらいやではないのだから手に負えない。

よるべ様より頂いたサナダテイラストからの派生ネタ第二段でした。こちらもよるべ様のみお持ち帰り自由。
素敵なときめきをありがとうございました。次回もお待ちしております(←)



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