都市マスタプランに思う 1992年、都市計画法改正で住民に最も近い市町村が、都市計画を策定することになった。川崎市では、都市計画は都市計画マスタープランに則して定めることになっている。都市計画マスタープランでは、基本的方針に市民の意見を反映させて定めることと、およそ20年後の川崎像を描き、地域の課題を解決するためのルールや、整備の方法を決めるための方針を示すことができる。川崎市では、各区で都市計画マスタープランづくりの市民提案づくりが進められている。
川崎市の現状をみると、無秩序な業者による開発が目にあまる。いろいろな建て方をしたり、住宅地にも関わらず、日照被害や工事被害をもたらす近隣のことも考えないやり方をどこかで食い止めないと、トラブルが増え良好な地域コミュニティの形成は遠のくばかりである。
斜面地でのマンション開発は、いろいろな問題を引き起こす。低層住居専用地域にも関わらず、住環境を壊す高層マンションが建ってしまう。周辺のインフラ整備に合わない巨大マンションができたりする。唯一残ってきた斜面緑地の破壊は、都市の潤いを無くするとともに、美しい都市景観、風格を無くしていく。緑の減少は、アスファルト、コンクリートの増加を意味し、交通量の増加をもたらす。このことは、静かな環境を壊し、地域でヒートアイランドの被害が出るようになつたり、都市集中豪雨に悩まされることになる。
粗悪な開発をした場所を捨てて新しい建物を次から次へと建てるような開発・政策を容認していると、少子・高齢化が進む中で、あと10年もすると、廃墟や空家が増えたり、環境が悪化し、治安が悪くなってくる地域が出てくると考えられる。
まちなみを美しくしていく方法は、地区協定、建築協定等のまちのルールづくりが有効である。緑の環境を守り、作っていくには、建物規模、建物の高さ、敷地の面積、緑地面積、位置等のルールをみんなで作っていくプロセスが重要となる。都市マスタープランの策定過程は、各地でまちづくりに関わっている生活者、グループ、団体等と接触し話し合う良い機会となる。
緑の保全は、地権者にとっても、家屋敷の風格を保つとともに、また、固定資産税、相続税等、税金面でも有益な背策が取られ始めていている。都市における公共的広域的な役割から、地権者にとって更なる有益な背策を推進する必要がある。 行政、市民、企業のパートナーシップが叫ばれてから年数が経ったが、パートナーシップがなかなか進まないもどかしさを感じる。この間、市民提案は多く出されてきたが、パートナーである行政、業者の動きが明確にされていないのが現状である。市民提案をしっかり受け止める責任があると考えられるが、実行プロセスが明確にされていない。市民も、行政・企業にパートナーとしての役割を求める必要があるだろう。年数が経つと担当者が変わり、責任者、市長が変わりいつの間にか消えていく。時間が経たないうちに政策を実施する仕組みが必要で、地域に密着している区レベルで推進組織が維持されていく必要がある。担当者が変わっても、市長が変わっても、必要なまちづくりが推進される必要がある。川崎市の各区の規模は、今話題になっている市町村合併規模からしたら、20万規模の中規模都市で、生活者中心の推進機関が必要な規模と考えられる。
身近な環境を良くしていくには、身近な推進者が重要な役割を担っていく必要がある。私たち生活者が、日々の活動を生かす政策を掲げて、都市計画マスターの策定におおいに関わることが重要になっている。
(小海)
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