そんな日常〜奈良家ver.〜
ある日の休日
「父さん、朝だよ!ってゆーか、もう昼だよ!」
「いい加減におきてよ」
「今、何時か知ってる?もう11時半だよ!」
朝…というよりも昼と言ったほうがよほど正しい時間。
子供たちが部屋に入ったときにはとっくに目は覚めていたが、意識はまだ3分の2ほど眠りの世界に引きずり込まれていて、未練がましく布団にしがみついていた。
…昨夜はナルトと綱手と自来也のお供をさせられ、明け方まで付き合う羽目になったのだ。
途中で抜け出すことは、もしかしたら可能だったのかもしれない。
だが、酔っ払ってぐでんぐでんになった三人をシズネ一人に任せて帰ってしまえるほどシカマルは自己中心的ではなかった。
布団の中で耳をふさいで子供たちの言葉を無視しながら昨夜…いや、むしろ今朝の会話を思い出す。
『さーて、もう一軒行くかのう』
『エロ仙人、エロ仙人、こっちにいーい店があるんだってばよ』
『ナルト、早くそこに案内しな』
『おう、任せとけってばよ!』
『自来也様、どれだけ呑むつもりですか。ご自分の足元がフラフラなの、わかってますか?明日頭痛でうなされても知りませんよ』
『綱手さま〜、もういい加減に帰りましょう。ってゆーか、帰りますよ』
『ナルト。オレは眠いんだ。疲れたんだ。さっさと家に帰りたいんだ。…選ばせてやる。オレを本気で怒らせたいか、否か』
『シカマル、硬いことをいうな、ほれ。次の店ではおごってやるから』
『まったく…シズネ、まだいいだろう?』
『あともう一軒行ったらかえるってばよー。だから、シカマルも一緒に呑むってばよ!』
ブチ
『ん?何の音だ?』
『…気のせいだろう』
『そうそう、早く行くってばよー』
『『黙れ』』
『シ、シズネ?』
『…シカマル?』
『いい加減にしてください』
『帰るぞ』
『ちょ、ま…』
『何か、用か?』
『問題でも?』
『『『……………………スミマセンデシタ』』』
表面上はいつもどおりの二人のただならぬ迫力と微かに漂う殺気に気圧された3人は、首を縦に振ったのだった。
しかし、三人とも酔いすぎていて、このままだとあの“伝説の三忍”や“火影”が路上でいびきをかく、という状況にも
なりかねなかったのでシズネは綱手を、シカマルは自来也とナルトをそれぞれ家に送り届けた後に帰宅したのだった。
(まったく、どうしてオレがあいつらのお守りを…!)
思い出したら、また腹が立ってきた。
「おきてってば!」
…まだ、寝足りないんだよ。オレが何時に布団に入ったと思う?5時40分だぞ!ただでさえ任務続きで寝不足だってのに…。休日ぐらいゆっくり寝させてくれ。
「さっさとおきないと母さんに怒られるよ?」
いのに?別にかまわねえよ。っつーか、今更アイツに怒られたところで怖くねえし。伊達に幼馴染やってるわけじゃないんだぜ。もう慣れちまった。
「脳みそがとけちゃうよ」
とけねえよ。んな簡単にとけるんなら、オレの頭の中は、すでに味噌汁が出来上がってる。
子供たちの言葉に頭の中だけで返事を返しながら、意識はすでに4分の3、眠りの渦へ巻き込まれている。
「「「父さん!!!」」」
姉弟三人の見事な三重奏が部屋に響くが、もう気にしないことにする。
「「「起きてってば!」」」
「久しぶりに将棋しようよ!」
「ポーカーしようよ!」
「花札しようよ!」
今のシカマルにとっては子供たちと遊ぶことよりも眠りを貪欲にむさぼることのほうがはるかに大事で、重要なことだった。
子供たちの訴えから察するに、オレが今すぐ起きなければいけないような事態ではない。
どころか、さあどうぞ、心置きなく寝ててください。なーんていわれてるように思えるほど平和だ。
だから、心置きなくすべての意識を夢の世界へと旅立たせていった。
そのあとも3人は父親を起こそうと悪戦苦闘していたが、結局目を覚ますどころか身じろぎもしない父親にあきらめて部屋を出て行ったのは、それから1時間後の話。
そして、思う存分寝てすっきりしたシカマルがおきたのはそれからさらに4時間後の話。
勿論、おきたシカマルを三人の子供が待ち構えていて、結局遊びの相手をさせられたのはいうまでもない。
そんな平和な、ありきたりなある日の休日。
なんだかんだいいつつ誰かの面倒を見る羽目になる人
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