「きゃーv見て、椿。可愛いわよ」
「あら、可愛いわね。…ねぇ、ネジとサスケにも見せない?」
「見せたい!わたし、サスケくん呼んでくる!」
「じゃあ、わたしはネジを呼んでくるわ」
うららかな春の日の午後。
ここ、うちは邸でサクラと椿が2人ではしゃいでいた。
お昼ね
「あ、サスケくーん」
クナイの手入れをしていたサスケだったが、愛妻の声に顔を上げると、
「ねぇ、ちょっとこっち来て!」
と引っ張られた。
「どうかしたのか?」
気になって問えば、
「いいから!いいものが見れるわよ」
と、ニコニコとかわいらしい笑顔で答えられた。
クナイの手入れはほとんど終わっている。別に、やることもない。
この2つの条件を照らし合わせて、別に問題がないため(まあ、問題があったとしてもサクラが呼ぶのであれば何を放り出しても行くのだが)サスケはサクラについていくことにした。
「ネジ!」
庭にいたネジに声をかけ、椿は自らも庭に下りた。
「椿?どうかしたのか?」
楽しそうに笑っている妻に思わず聞けば
「こっちに来てくれないかな?」
と、言われた。
「何かあるのか?」
問い返せば
「ええ、とてもいいもの。かわいらしいわよ」
と、満面の笑みで答える。
別にやることもないし、妻がなぜこんなに嬉しそうなのか興味を引かれたので、ネジはついていくことにした。
「あ、椿」
「あら、サクラ」
先ほどの場所に、それぞれの夫の手を引いて向かうところで、ばったりと出会った。
「なんだ、おまえもか?」
「らしいな」
サスケとネジも、お互いが呼ばれていることに少し驚いたが、目の前のそれぞれの妻がはしゃいでいるのを見て、なんとなく納得した。
サスケとネジが連れて行かれたのは、日当たりのいい縁側だった。
確かに、今日は天気もよくあそこは気持ちいいだろうが、妻たちがそんなに喜ぶようなものが会っただろうか?
思わず顔を見合わせてしまう2人だったが、先にそこまで行っていた2人に小声で
「早く!」
と呼ばれてそこに行けば…
「ね?」
「かわいいでしょ?」
もうすぐ3歳になるうちは家の長男、カイとカイと同い年の日向家の長女、レイが仲良く手をつないで眠っていた。
「これは…」
「確かに」
日ごろ娘を溺愛しているネジだけでなく、サスケもうなずく。
「こいつも、黙って寝てればいいんだがな」
サスケが、自分になつかない息子を見て苦笑する。
「なんで?カイくんはいっつもいい子よ?」
サクラが、不思議そうにサスケに問うが、サスケは言葉を濁して、それには答えない。
「レイ、幸せそうね」
椿が穏やかに笑いながらそう言えば、
「ああ。…レイにはこのまま幸せでいてほしいな」
ネジも、穏やかに笑う。自分たちのように、暗い子供時代を送ることがないといい、と心から思う。
顔をよせ合いながら、微笑みながら、手をつなぎながら眠る2人の横には、風によって運ばれた桜の花が散っている。
薄いピンクの花に包まれたピンク色の頬のかわいらしい子供たち。
カイの短い黒髪とレイの長い黒髪が入り混じっている。
すやすやと、規則正しい寝息。
安心しきった表情。
見ているこっちまで幸せになってくる。
思わず頬が緩む。
今日は、珍しく4人とも任務が入っていなかった。
そのため、午前中は久しぶりにたくさん遊んでもらったのだ。体力のない子供たちは遊び疲れて寝てしまったのだろう。
2人の幸せそうな寝顔を見ていると、自分たちが殺伐とした仕事をやっている現実とは別世界にいるようだ。
愛する伴侶が隣にいて、その最愛の伴侶と自分の子供が幸せそうに眠っている。
これ以上の幸せがほかにあるだろうか?
4人とも、微笑みながら子供たちが目覚めるまで、日当たりのいいその場所で和やかな春の日の幸せな午後を過ごした。
柔らかな日差しの、暖かい春の日の、何気ない、けれどもとても幸せな、そんなある春の日のお話。
キミがいて、僕がいて、彼等がいる最上級の幸福。
BACK