「さーさーのーはーさーらさらー」


歌ってるのは、先生だ。微妙に音がはずれてるけど楽しそうに歌ってる。


「のぉーきぃーばぁーにぃーゆぅーれぇーるぅ〜」


微妙に拳のきいた歌い方は、オビト。それ、なんか違う気がするぞ。


「おーほしさーまーきーらきらー」


リンは、声もかわいいし音程も合ってる。聞いてて気持ちがいい。


「きーんぎーんすーなーごー」


さっきスルーしたらみんなに本気で怒られたから、今回はちゃんと歌った。
先生もオビトもリンも満足そうにこっちを見ているから、まあ…恥ずかしかったけど、いいか。





たなばたさま






で、オレたちが今何をやっているかと言うと、一応Dランク任務。
アカデミーでの、七夕の準備。
要するに、笹を飾って、飾り付けして、みんなに短冊配って…。



「書けたよ!」
「うん、じゃあ貸して。つるしてあげるから」
「おねがいします!」
「どこがいい?」
「んーとね…あ、あそこ!一番高いところがいい。お星様に一番近いの!」
「わかった」



「あ…あのね」
「ん?どうした?」
「…これ……」
「ああ、かけたのか。じゃあ、吊るそう。どこがいいかな?」
「あ!見ちゃだめー!!!」
「へ?」
「あ、あの…見たら、だめ」
「…うん。わかった。じゃあ、みんなにも見えなさそうなところにつるしておこうか」
「お、おねがいします…」
「はーい」



「ん!」
「…」
「ん!」
「…」
「なんで受け取らないんだよ!」
「受け取ってほしいなら、ちゃんとお願いしなさいね」
「…これ…頼む」
「まあ、いいか。…で、どの辺に吊るしてほしい?」
「ん〜。あ、下のほうがいい」
「へえ?」
「だって、上のほういっぱい吊るしてあるじゃん。だから、下のほうがいい!」
「なるほど…」
「いいか?」
「うん。ちゃんと吊るしておくよ」
「…ありがと」
「どういたしまして」





「ねえ…」
「ん?」
「こんなかみきれにおねがいごとをかいて…ほんとうに、かなうの?」
「さあ?」
「え…」
「実際にどうなのかは…わからないな」
「…」
「でも、こうやって書いて…自分の中にある願いを自覚したりとか…あとは…言霊、って知ってるかな」
「ことだま?」
「言葉には、力があるんだよ。だから、短冊に書くことで…その言葉は力を持って、いつの日にかかなう時が来るかもしれない」
「…」
「だから、どっちかっていうと…これは、祈りに近いかもしれないね」
「…ぼくも、かく。だから、かいたら…」
「うん、ちゃんと吊るしてあげるよ」
「すぐに、かいてくるから!まっててね!!」







「あー!やっと終わった!」
「ね、今夜…晴れるかな?」
「どうだろう」
「晴れるといいなぁ」
ようやく終わって、それぞれ肩をまわしたり伸びをしたりしていると、目の前に3枚の紙切れ…短冊が、差し出された。
「?」
先生の、満面の笑みが見えた。
「せっかくだから、みんなも書こうか。あまってたんだ」
「やったぁ!」
「何書こうかな…」
「…」
オビトとリンは喜んで書き始めた。先生は鼻歌を歌いながらそれを見てる。
「ん?カカシ、どうした?書かないの?」
「…先生の分は?」
「オレ?オレは…みんなの短冊を吊るすから、いいよ」
「…」
ため息をついてから、オレは短冊を半分に切った。
「どうぞ」
「…」
ちょっとびっくりした顔。
ほんとうは、先生が一番こういうの好きなくせに。
「先生のは、オレが吊るしてあげる。だから、先生も書きなよ」
優しい、笑顔。
「カカシ〜〜!」
「…」



結局、オレのをオビトが吊るして、オビトのをリンが吊るして、リンのを先生が、先生のをオレが吊るした。
それぞれ、何が書かれているのかは見なかった。
気になったけど、見なかった。



笹の葉さらさら 軒端に揺れる
お星様きらきら 金銀砂子

五色の短冊 私が書いた
お星様きらきら 空から見てる




最後に、もう一度4人で歌ってからアカデミーを出て、一楽でラーメンを食べて帰った。
帰り道に見上げた空には雲がなくて、天の川がきれいに見えた。
織姫と彦星は年に一度の再会を楽しんでいるに違いない。
父と母も…空の上で再開できたのだろうか。
今頃一緒に…星を、見ているのだろうか。


もしそうだとすれば、それはとても幸せなことだと思った。







この願いがかなうのなら――



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