そんな日常〜うちは家ver.〜
勘違い
少々頭がよくても、子供はやっぱり子供なんです。
頭がよくても、時々とんでもない意味の取り違えをしたりもするんです。
「お母さん、モモちゃんお手伝いする!」
愛娘の可愛い申し出に、サクラは少し微笑み、考えるが今は手伝ってもらうことなどなかった。
「そうね…今はお手伝いしてもらうことないから、後でお手伝してくれる?」
「うん!」
その言葉に、モモは元気よくうなずく。
その様子にまたサクラは微笑み、手を軽く濯いでからモモの頭を優しくなでた。
「あのね、今日の晩御飯は、なあに?」
大好きな母親に頭をなでてもらって嬉しそうに笑いながら、モモがたずねる。
「今日はね、ご飯と、お魚の焼いたのと、玉子焼きと、白和えと、貝のお味噌汁よ」
にっこり笑ってサクラが夕食の献立を順に言えば…
「えええーーー!!!」
なぜか、モモが素っ頓狂な声を上げた。
「ど、どうしたの?モモちゃん」
驚いてサクラがたずねると、モモが泣きそうな顔で言った。
「お母さん、ダメだよ」
モモが必死に訴えかけるが、サクラにはなんのことかわからない。
「え?」
聞き返すと、モモは真剣な表情で言った。
「お兄ちゃんをお味噌汁にしちゃだめーーー!!」
…………
…………
…………
「っぷ!」
しばらくの間の後、サクラはこらえきれずに吹き出した。
そして、笑い出す。
「っははは、あはは…!」
それまで真剣な顔で母親を見上げていたモモは、なぜ母親が笑ったのかわからず、きょとんとした顔をしている。
「?」
無理やり笑いを収めたサクラが、まだ口元が笑っている状態のままモモに諭すような口ぶりで言った。
「あのね、モモちゃん。お味噌汁にするのは“カイ”君じゃなくって、“かい”は“かい”でも食べ物のほうの“貝”なのよ。今日のお味噌汁は、アサリのお味噌汁なの」
母親の言葉にようやく自分の勘違いに気づき、モモは少し照れたように笑ってみせた。
「そっかー。よかったぁ」
その様子が我が娘ながらなんともかわいらしく、ぎゅぅっと抱きしめる。
いくら賢くとも所詮は4歳児。
こんな勘違いも、あったりするんです。
おまけ
親子で仲良く笑いあっていたら、少し、変なにおいがした。
「ん?」
急いで振り返ると、そこには沸騰直前の味噌汁が…。
「きゃーー!!!」
あわてて火を止めるサクラ。
伝説の三忍にして五代目火影であった“綱手姫”の弟子であるうちは(旧姓:春野)サクラ。
今では、綱手に匹敵する医療忍術の使い手として里の内外に名を馳せている彼女であったが、やっぱり時々どこか抜けていたりもするのであった。
勘違いから来る誤解。よくある話です
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